キリマンジャロの雪

投稿者 Yumeka Roche 2013年7月3日水曜日


LES NEIGES DU KILIMANDJARO 2011年

[監督] ロベール・ゲディギャン
[出演] アリアンヌ・アスカリッド、ジャン=ピエール・ダルッサン、ジェラール・メイラン、グレゴワール・ルプランス=ランゲ、マリリン・カント

平等、というのは見方や価値観によって変わる。
リストラしなければならない状況で、どうやってその対象者を選別するか?
日本は大抵、年齢順が多い。45歳以上は人件費コストが高いため、経費削減という点では合理的。
一報、アメリカは勤続年数が低いものから選別されるというのを聞いたことがある。確かに会社に対する貢献度は低く、そして再雇用が若者の方が比較的しやすいからだという。これも一理ある。

この映画の主人公は、皆の前でクジで選んだ。
もちろん自分は組合長にも関わらず、自分のクジも入れて。そして、案の定自分のクジも自分で選んでしまう。

どこまで平等主義なん?偽善者過ぎー!と私は思ったのです。本人は失業で喪失感はあるものの、このやり方には納得している様子。奥さんも、それを受け入れ、「ほんまええ人やなぁ」という印象。

しかし、クリストフの登場で一気に平等がぐらついだ。
クジが平等だったと説明するミシェルに、彼は叫ぶ。

こいつは早期退職者で小さな家でのんきに暮らしている。昔とは時代が違うんだ。職を失って暮らせるか新入りだから解雇手当もない。まず金持ちや共働きの人から解雇。給料や労働時間も減らす。それか工場に放火汚い妥協よりマシだ!

汚い妥協、確かに、そう映る。
マルセユの広めのアパルトマンのバルコニーで、昼真っからワイン片手に道ゆく人を眺める。
一日かけて手の凝った夕食の支度をする。日曜大工を始める。
週末には孫と海に行き、その後は庭で家族とともにディナー。
こんなミシェルと、母親が出て行き、クイック(ハンバーガーチェーン店)でセットメニューを頼み大はしゃぎしている弟たちの面倒を見ているクリストフと、おなじクジで協議してもクジ一票の重さが違いすぎる。

かといって、罪は罪。人は人。どうしようもならない。
ただ、きっかけは罪悪感からとはいえ、その後にとるミシェル夫婦の行動は尊い。

美しいマルセイユと美しい人たち、そして必死に生きている人たち全てへの賛歌。

☆☆☆☆☆




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